琉宮城の姫君
琉宮城の姫君 (小説すばる10月号 掲載読み切り中編)
滝沢志郎
あらすじ
大正時代の沖縄。東京から沖縄に赴任した教師(吉永光太郎)は、ある事情で学校を去ることになる教え子(高良倫子)から「宝探し」を依頼され、同僚の女性教師(渡名喜千代)と宝探しに出かける。そこで彼らが見つけたものとは...
初めてあらすじを読んだときは面白そうではあるけど「宝探し」って…
と思っていた部分もありましたが、上手くストーリーとして組み立てられていて、全く違和感なく読めました(^^)
王国時代から大正(+ちょっとその先)まで幅広い時代・分野の
琉球史・沖縄のエッセンス満載。一言で表すと。
琉球史ファン必読
以下ネタバレ注意
大正を舞台にした小説と聞いていたから、ほとんど大正時代で展開するのかなと思いきや、意外に琉球王国時代も繋がって出てくる!
大正の部分は、大正の沖縄らしく鉄道旅が出てくるっていうのが私的なポイント。沖縄が舞台なのに鉄道で旅行してるのがなんとも新鮮。
王国時代のメインは1700年頃。尚敬王代。
同じ尚敬王代を舞台にした『思五郎が行く』を読了して3日と経たないうちに読み始めたので、そっちの記憶も新鮮でより味わいも深くなりました☆
『思五郎が行く』のラストとかなり繋がったしね。
ちなみに宝探しの「宝」。最初の頃の「宝」の背景の説明を読んで多分あれだろうなって思ったのが家譜。
予想はバッチリ当たりました。
中盤。
生徒(倫子)の先祖モデルって...と『思五郎が行く』で読んだのがピンときた。
もう一回思五郎を読み返して。平敷屋朝敏!
宝って平敷屋朝敏の家譜か❕
琉球史の謎を上手く取り入れた設定でもう最高♡
でも、本当に平敷屋朝敏の家譜の写本どこかから出てきたら面白いのになぁ
終盤。
『姫百合(ひめゆり)』でもう一回ピンときた。
あっ。これもそういうことか。
数十年後の沖縄戦で倫子の後輩たちに起こったことを考えると胸が痛かったです。
渡名喜千代は生き残ったんだろうか。
倫子が墓に戻した家譜はどうなったんだろう。
倫子は沖縄に家譜を取りに戻ることが出来たんだろうか。
そんなことを考えました。
そうそう。
「鷲の鳥」聞いたことなかったから、Apple musicで聞いたよ。
沖縄の歌もっと聞きたいな。
夢中になって一気読みしました。こんなに小説に夢中になったのは久しぶり。
(テンペストが大きすぎてあれ以来、なかなか夢中になれる小説に出会うことって少ない)
しかも、こんなにスッと感情移入できた中編は初めて。
私は普段圧倒的に長編派。読み切りの短・中編ってなかなかハマれないし、今までハマったのも殆どないくらい。
僅か30ページにこれだけの琉球・沖縄エッセンスを盛り込めたのはすごいなぁと感心。
そして、まだまだ琉球史のこと沖縄のこと知らないことたくさんあるなと思った次第。
読んで調べたくなる。そんな小説でした。