思五郎が行く
小説 "琉球劇聖” 玉城朝薫 思五郎が行く 上・下
世並岳生 著
『 百十踏揚』、『思五郎が行く』と読んで、3冊目の世並さんの小説。
小説なのか研究書なのか時々わからなくなるいつもの語り口は健在。
(これはこれで背景知識もしっかり身に付くからいい部分もあるんですけどね💦)
ながらも、組踊300周年関連、琉球伝信録観劇と何かと触れることが多かった尚敬王時代の小説ということで興味深く読みました。
組踊の創作者として知られる「玉城朝薫」の一代記。
冊封、江戸上り、組踊創作、1700年代の琉球の内情も絡めながらストーリーが展開していくので、この辺りに興味がある方にもお勧めです。
読んでいて印象的だった箇所をピックアップすると
・江戸のぼり(江戸立ち)がリアルに感じられた
江戸上りに関する展示でを首里城で見たことがあったり、その図録も持っていたりで概要は大体理解していましたが、小説で読むと登場人物たちのセリフや心情などストーリー共に江戸上りが進んでいくとより実感しやすかったり、今まで気に留めていなかったことに気づいたり。
琉球一行の鹿児島から江戸へと行く道のりを読みながら追っていく中で発見したのが、これ現代の新幹線(在来線の東海道線も)とほぼ道筋一緒じゃない⁉ということ。
江戸上り一行は船を使っている区間もありますが、ほぼ一致。
聞き覚えのある地名が多いなぁと思ったら、新幹線or東海道線で通ったことあるわと。
今度東海道新幹線に乗るときは、江戸上り一行にも思いをはせてみては?いつもとまた違った景色が楽しめると思います。
時間に余裕があって電車に強い人は在来の東海道線の方が景色の変化もより楽しめて、停車駅も多めなのでこっちも良いですよ。
・玉城朝薫の生涯
一代記なんで当たり前といえば当たり前ですが彼のことをよく知ることができました。
「組踊」のイメージが強い彼だけど、芸能だけやっていたのではなく琉球王府の役人として他の役職にも就いていた期間もあり、むしろ、芸能専門(踊奉行)だった時期の方が彼の人生で短いくらい。彼の業績として組踊と那覇港関連しか知らなかったので、こんなに色々やってたのね( ..)φとなりましたが、
本文に、芸術家である以前に玉城朝薫は王府の上級役人だった。とあって、そういうことか!納得。王府役人は短期間で転任を繰り返すし、芸能だけやってればいいってわけではないよね~
で、最大のツッコミは、王府役人としての玉城朝薫があって、多種多様な分野で実績を残しているわけだから、彼の芸能の方面だけを切り取って玉城朝薫を、他の芸術だけに取り組んだ偉人たちと同じように「劇聖」と言うのちょっとはおかしいのでは?と本文で主張。うんうん。確かにね。玉城朝薫の他の側面にももっと光が当たったらいいね。
って、表紙を見たら、副題が「琉球劇聖 玉城朝薫」えっΣ(・□・;)劇聖はちょっと違うんじゃないの…何故副題これにした?
新刊ではほぼ無いので、図書館か古書で探すのがお勧めです!